おとうとの死
弟の思い出は古くなってしまった白黒写真のなかに生きています。
SLに乗って海水浴に連れて行ってもらったり、チャンバラごっこをしたり、
冬には雪玉をぶつけあったり。
二人しか兄弟はいなかったし父母は共働きで忙しかったので、記憶は遠いけれど
二人でよく遊んだように思います。
そして入院中のベッドの上での白黒写真。
私がもの心ついてから、小脳のガンだったと聞かされました。
よろけたり、よく転んでいたのはそのせいだったのではないかと。
父母は葛藤の毎日だったと思います。
かわいい我が子が幼くしてガンで入院するのです。
それも治る見込みのない脳腫瘍なのです。
でも毎日希望をもって前を向いていたに違いありません。
私も同じことが起きれば必ずそうであるからです。
よく分かっていない私が写ったお葬式の白黒写真が一枚。
余白には母の「ごめんなさい、ごめんなさい。」とペンで書かれた跡がありました。